
公開年 | 1980年 |
監督 | 野村 芳太郎(のむら よしたろう) |
脚本 | 井手 雅人(いで まさと) |
上映時間 | 114分 |
原作 | 三木 卓(みき たく)「震える舌」 |
目次
おいで、おいで・・・幼ない娘・・・。彼女はその朝、悪魔と旅に出た。
破傷風菌に侵された少女と、その両親を題材にした作品。
原作者の三木卓が自分の娘が破傷風菌に感染した時のことをモチーフとして描いているためリアリティがある。
病気をテーマにしているため医療系だと思う方もいますが、ホラー的趣向で制作された作品です。
幽霊でもヒトコワでもないホラーはかなり珍しいです。
幼い娘を襲う怪物は「破傷風菌」
破傷風を発症した若命真裕子演じる昌子の鳴き声が怖い。
音量的にもホラー映画の叫び声と同等なので苦手な人は音量を下げたほうがいいかもしれません。
破傷風は刺激をさけるために明かりを消した病室に入院することになるのですが、
その薄暗さと少女が苦しむ姿が見ていて辛くなります。
昌子を治療している大人たちがひどい事をしてるように見える苦しむ声もリアルです。
また、大きな音を出すと昌子は発作が出てしまうため常に緊張感があります。
病院内で騒ぐ子供や、配膳のお盆を落とした時などまさにホラー映画の緊張感でした。
疲労困憊の演技力が高すぎてドキュメンタリー
この夫婦役の2人がすごく自然で本当に役になりきっているんだなと思わせる演技力です。
治療のために娘の乳歯を抜くという場面で、歯を取り出す時に邦江が目を背けるシーンや、
「死にそうだよマサコ、すごく脆いよ、すごく」という父親の昭がつぶやくシーンは演技と思えませんでした。
昌子の苦しそうな姿や看病の疲労でなげやりになる邦江が、
「産まなきゃよかったあなたと一緒にならなければよかった。」
と言ってしまう時の悲壮感や、昭が感染するのを恐れて昌子に触れないようにしていることを見抜いた邦江が
「うつるのが怖いんでしょ」
と言うシーンは忘れられません。
ついには看護師に刃物を向けるほど邦江は精神を侵されてしまい、昭もやつれきってしまいます。
しかし、医師たちの懸命な治療や両親たちの看病の甲斐あって昌子の破傷風は回復します。
やっと話せるようになった昌子が好物でもないはずなのに「チョコパン食べたい」と言った時は安心しました。
この映画は途中で視聴をやめてしまうことはお勧めしません。絶対に最後まで見てください。
最後の「鰻重特上」に救われます。